ローマ　《バルベリーニめぐり》



ローマではバルベリーニの紋章（バルベリーニ枢機卿、のちのウルバヌス八世） に焦点を当てることにしました。わたしがウルバヌス八世に興味をもったのは ガリレオの宗教裁判がきっかけでした。ガリレオはどんな人物に立ち向かわな ければならなかったのか……

バルベリーニ家のルーツをたどれば、十一世紀のフィレンツェにまでさかのぼ るのだそうですが、その後財力を蓄え、十六世紀にはかなりの影響力をもって いたようです。そして一族からウルバヌス八世（1623年法王に選出）を出した ことで、その権力は絶頂に達します。

ウルバヌス八世の権力がどれほどのものかを実感するには、バチカンに行くの が一番でしょう。バルベリーニ家の紋章は、ハチです。バチカンには（そして ローマ市内にも）このハチが至る所にみられます。今度ローマに行かれること があったら、ぜひハチに注目してみてください。



三匹のハチをあしらったバルベリーニ家の紋章

なんといっても迫力があるのは、サンピエトロ寺院の奥にある、ベルニーニ作 の大天蓋でしょう。四本のねじれるような大きな柱をもつこのバロックの大作 はご存じの方も多いと思いますが、その四本の柱がハチだらけだということは あまり知られていないかもしれません。ぜひ、近くに寄ってごらんください。 ハチの群がぶーんぶーんと飛んでいるんです。



ハチがたくさん飛んでいるのですが……見えませんね^^;

それから、もっと奥にはやはりベルニーニ作の「ペテロの司教座」があります が、その右手には（つまりイイ場所に）、ウルバヌス八世のブロンズ像がある のです。それというのも、サンピエトロ寺院の建立に着手したのは四世紀のロ ーマ皇帝コンスタンチヌス一世ですが、完成に導いたのは十七世紀の、このウ ルバヌス八世だからだと思います。それもあって、この壮大な建物のいたると ころにバルベリーニのハチが見られるのです。

もう一つわたしが驚いたのは、バチカン美術館の入り口近く、タペストリーの 飾られた廊下でした。左手の壁が「キリストの生涯」のタペストリー・シリー ズで飾られていたのに対して、右手の壁は、なんと「ウルバヌス八世の生涯」 シリーズだったのです。文字通り「キリストの向こうを張ってる」感じで、彼 の権力の大きさを感じさせられました。（この配列が、いつ、誰によって決め られたのかはわかりませんが。）



バチカン美術館入り口のらせん階段
バルベリーニ家の紋章とメディチ家の紋章

紋章の位置を図示してみました


もっとハチまみれになりたければ^^; ローマ市内のパラッツォ・バルベリーニ です。これまたベルニーニの手になるバロックの大建築で、現在は国立絵画館 になっています。ラファエロの＜ラ・フォルナリーナ＞（愛人と言われる女性 を描いたもの）をはじめ名作があります。（しかし、この＜ラ・フォルナリー ナ＞、奇妙な印象の作品ですねぇ。）国立絵画館は夜十時ころまで開いていま すが、バルベリーニ家の住まいの方は六時ぐらいで閉まってしまいますので、 早めに訪れてみてください。あっちもこっちもハチだらけです^^;

さて、このサンピエトロ寺院を背負って立つウルバヌス八世、バルベリーニ枢 機卿時代には（いえ、実際その後も、なのですが）学問・芸術に造詣が深く、 ガリレオにも好意をもっていたらしいのですが、法王としては弾圧の方針を採 ったわけですね。やっぱりハチは怖いです。（ちなみに、ガリレオの名誉回復 は現法王によって1992年になされました。）

ところで、なぜ「ハチ」なのでしょうか。これにはいくつか説があるようで、

１　バルベリーニ一族のもともとの名前　Tafani (アブ）から来ている。
２　ハチは神の摂理の象徴である。
３　勤勉と生産性の象徴である。

しかしどうしたって（刺す→コワイ）という連想が働きます^^;

【2009.4.15追記】
 BBSでローマ在住josciさんより、次のようなコメントをいただきました。なんと Tafani（アブ）からハチに変わったのは、まさにウルバヌス八世のときだった んですね！
どうやら、マッフェオ・バルベリーニが教皇ウルバヌス八世となり(1627)、 それまで家紋がアブだったのをハチにかえたみたいですね。 この家系はもともと姓をタファーニ、つまりアブといったのですが、つまり、かっこよくした（？）わけです。
メディチ家の紋章について読みたい方はこちらへ（準備中m(..)m)



欧州旅行メニュー
トップページへ