追悼　藤縄謙三先生

藤縄謙三訳『歴史�T』のことを翻訳フォーラムに書いてからまもなく、仕事上
古代ギリシャのある出来事についてウラトリをする必要が生じました。という
より、自分でもその周辺のことを知っておきたいと思ったのです。そこであれ
これ調べてはみたのですが、力足らずしてどうしてもよくわかりません。

そんなとき、ふと、「藤縄先生なら、きっと一発でモトネタがわかるんだろう
な」と思いました。たまたまその本を出す出版社から藤縄先生もご著書も出版
されていたので、わたしは毎度のずうずうしさを発揮して、担当編集者に、
「藤縄先生に質問させてもらうわけにはいかないだろうか？」と尋ねてみたの
です。この機会にお知り合いになっておけば、いつか『歴史』に先生のサイン
をいただくチャンスもあるかも……などというミーハーなことも考えたりしま
した。

ところが電話の向こうから聞こえてきたのは、「藤縄先生はお亡くなりになり
ました」という編集者の声でした。驚きました。人間みないつかは死ぬのだか
ら、驚くことはないのかもしれないけれど、でも……。

トゥキュディデスの『歴史�U』は、訳者を代えて刊行されるそうです。藤縄先
生のご冥福をお祈りいたします。